高血糖症(糖尿病)

高血糖症(糖尿病)』は、血液に含まれるブドウ糖(血糖)の量が慢性的に多い状態です。 血液中のブドウ糖が多いと、全身の血管に負担がかかり、障害されていきます。 その結果、「糖尿病性網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」が起こったり、 血管が硬く厚くなる「動脈硬化」が進行して「脳梗塞」や「心筋梗塞」などを引き起こしやすくなったりします。 日本では、戦後、糖尿病の患者数が増加を続けており、特に近年、急増しています。 この増加には、日本人には高血糖症(糖尿病)になりやすい体質を持つ人が多いことや、 生活習慣の変化が関わっていると考えられます。 自分が高血糖症(糖尿病)になりやすいかどうか知っておきましょう。
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■増加する高血糖症(糖尿病)患者数

糖尿病の可能性がある人が約1870万人に上る

厚生労働省の調査によると、「糖尿病が強く疑われる人」は、2002年には740万人でしたが、2006年には820万人と、 4年間で80万人も増えています。これに「糖尿病の可能性を否定できない人(糖尿病予備軍)」も加えると、 高血糖症(糖尿病)の可能性がある人は2006年の時点で約1870万人に上ります。 このうち、過食や肥満などの生活習慣が原因の「2型糖尿病」が、その9割以上を占めています。


■高血糖症(糖尿病)とは?

食物から取り入れたブドウ糖は、血液によって全身に運ばれ、エネルギーとして利用されます。 『高血糖症(糖尿病)』は、血液中のブドウ糖である「血糖」の濃度を示す「血糖値」が高い状態が続く病気です。

血液中に含まれる「ブドウ糖(血糖)」は、私たちの体のエネルギー源として生命の維持・活動に欠かせないものですが、 血糖がエネルギー源として働くためには、「インスリン」というホルモンの助けが必要です。 「インスリン」は、膵臓の内分泌線であるランゲルハンス島にある「β細胞」から分泌される血糖降下ホルモンで、 糖尿病は、このインスリンの分泌が不十分だったり作用が低下したりすると、血液中のブドウ糖が十分に取り込まれなくなり、 血糖値が異常に高い状態が続きます(高血糖)。これが高血糖症(糖尿病)です。 高血糖によって体中の血管が傷つけられ、さまざまな合併症が起こります。

インスリンが不足すると、ブドウ糖がエネルギーとして十分に利用されなくなり、 血液中に多く残って高血糖(血液中のブドウ糖濃度が高い状態)になります。 血液中に残った余分なブドウ糖は、腎臓から尿へ排泄されます(尿糖)。 高血糖の状態が長く続くと、やがて多飲、多尿、全身倦怠感など糖尿病に特徴的な病状が現れます。 たんぱく質や脂質などの代謝異常も起こってきます。 そして、血糖が正しくコントロールされずに進行すると、ときには失明や生命の危険にさらされるような重大な病気をもたらします。

さらに、高血糖の状態が続くと、その糖が膵臓のβ細胞のインスリン分泌能力を低下させ、 インスリン抵抗性を高めてしまいます。この状態は「糖毒性」と呼ばれ、 さらなる高血糖を招くという悪循環に陥りやすく、糖尿病を進行させる要因ともなります。 糖尿病とわかったら、できる限り速やかに高血糖状態を解除する治療を行う必要があります。

糖尿病の多くは、「1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)」と 「2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)」の2種類に分類されますが、 それ以外にも、膵外分泌疾患、内分泌疾患、肝疾患、薬剤、感染症、妊娠などでも「糖尿病」になります。 日本人の糖尿病の9割以上は、中高年に多く起こる「2型糖尿病」で、 その発症には環境因子と遺伝因子という2つの要因が関わっています。


■1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)

「1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)」は若年者や子供に多く、 膵臓のβ細胞が破壊されインスリンの絶対的欠乏状態によって引き起こされる糖尿病です。 この病型では体外からインスリンを投与しなければなりません。

【関連項目】:『1型糖尿病』


■2型糖尿病

「2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)」はインスリンの分泌量が低下したり、 分泌のタイミングが遅れたり、作用が弱くなったりして起こります。 成人とくに中高年に発症する糖尿病の大部分がこの型で、β細胞はあっても、ブドウ糖に対する インスリン分泌反応の障害やインスリン効果の低下(インスリン抵抗性)によって徐々に高血糖となります。 これは遺伝的な体質に、過食、運動不足、その結果としての肥満、加齢などの後天的な因子が加わって発症すると考えられています。 とくに肥満ではインスリンの作用が十分発揮できない状態となっています。

わが国の糖尿病の患者のほとんどは2型で、糖尿病になりやすい遺伝的体質や加齢に加えて、 肥満、食べ過ぎ、飲みすぎ、運動不足、ストレスなどの生活習慣の関与が大きく、代表的な「生活習慣病」の1つとされています。 特に、肥満は糖尿病の原因になりやすいので要注意です。 症状としては、口渇、多飲、多尿、倦怠感、体重減少などがあり、高齢者では糖尿病性の網膜症、腎症、 神経障害などの合併症状が自覚症状の中心となることが多いようです。

2型糖尿病の治療方法には食事療法、運動療法、薬物療法がありますが、軽度な糖尿病では、 食事療法と運動療法や生活療法が治療の基本となり、食生活や運動などの生活習慣を正しくすることで、 重症化を防ぐことができますが、ときにはインスリン療法(インスリン注射)を行ったほうがよい場合あります。 重症化するとさまざまな合併症を引き起こすので軽度でも注意が必要です。


■高血糖症(糖尿病)の環境因子

よくない食生活や運動不足が肥満やインスリンの作用低下を招く

高血糖症(糖尿病)の環境因子には、食生活や運動などの生活様式の変化や、それに伴って起こる肥満などがあります。

▼肥満
肥満は、インスリンの作用を低下させるため、高血糖症(糖尿病)の大きなリスクの1つです。 肥満かどうかは「BMI(体格指数)」で判定されます。 50歳代の男性の肥満度は、戦後、上昇を続けており、それに比例するように高血糖症(糖尿病)の患者数が増えています。

BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
(25以上で肥満と判定されます)

▼食生活
食の欧米化などが進み、かつては20g程度だった日本人の1日の脂肪摂取量は、戦後約3倍に増えました。 特に動物性脂肪の摂りすぎや、食べ過ぎなどによる内臓脂肪の蓄積は、インスリンの分泌や作用を障害するといわれています。 また、食べ過ぎのほかにも、「1日の食事回数が1〜2回」「夜遅くに食事を摂る」などの食生活や「飲酒」も肥満につながります。

▼運動不足
自動車の保有台数の増加は、運動不足の1つの現れといえるでしょう。 食べ過ぎても、その分体を動かせばエネルギーが消費されます。 しかし、運動不足で消費量が少ないと、肥満を招きます。 ただし、運動をするからといって、多く食べてもよいというわけではありません。

■高血糖症(糖尿病)の遺伝因子

日本人にはインスリンの分泌が障害されやすい体質の人が多い

日本人は、欧米人に比べて、インスリンの分泌が障害されやすい体質の人が多いことがわかってきました。 こうした遺伝子があるため、欧米人はBMIが30以上で高血糖症(糖尿病)を発症する人が多いのに比べ、 日本人はBMIが25程度の”小太り"でも高血糖症(糖尿病)になることがあります。

●高血糖症(糖尿病)と遺伝との関係

高血糖症(糖尿病)の起こりやすさを規定する遺伝子多型は、これまでに10種類ほど見つかっています。 1つの遺伝子多型によって高血糖症(糖尿病)になる確率は、その遺伝子型がない人の1.2〜1.4倍程度とそれほど高くありません。 しかし、いくつかの遺伝子多型が複合的に働き、そこに肥満などが加わることで糖尿病を発症することがあるのです。 家族に高血糖症(糖尿病)の患者さんがいる人は、遺伝子を持っている可能性が高いと考えられます。 また、多くの場合、家族は生活習慣も似てきます。遺伝子を変えることはできませんが、生活習慣は変えられます。 生活習慣を改善すれば、多くの人は高血糖症(糖尿病)の発症を防ぐことができます。


■高血糖症(糖尿病)の症状

糖尿病になっても、症状はほとんどありません。 進行して初めて、自覚症状が現れてきます。 糖尿病が進行してくると「多尿、口渇、多飲」「過食」「体重減」「だるい、疲れやすい」などの症状が出てきます。 症状がないまま進行するだけに、「血液検査」を受けて早期に発見することが重要です。


■高血糖症(糖尿病)の検査・診断

糖尿病の検査・診断方法には、「空腹時血糖値検査」、 空腹時にブドウ糖液を飲み、血糖値の変化を調べる「ブドウ糖負荷試験」、 血液中の赤血球にブドウ糖がどれだけ付着したかを調べる「ヘモグロビンA1c検査」があります。 空腹時血糖値検査は、10時間以上絶食してから、翌朝に血糖値を測る方法で、健康診断などで一般的に行われる方法です。 ブドウ糖負荷試験は、10時間以上の絶食後、75gのブドウ糖液を飲み、30分後、1時間後、2時間後に採血し、血糖値の変化を調べます。