インスリン

インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンです。その分泌量と効き目の低下が糖尿病へ直結します。


■インスリンの量と効き目の低下

食事療法の効果にも無視できない関係

2009年の国民健康・栄養調査報告書によると、糖尿病の有病者と予備軍の合計は成人男性が30.3%で、すなわち約3人に1人。 60歳代に限れば、41.4%にのぼります。一方、成人女性の場合は全体が25.3%で、約4人に1人が糖尿病の危機に瀕していることに。 男性と同じく、60歳代ではその割合が急上昇し、34.1%にも達しています。 糖尿病患者が急増している背景にあるのは、食事の不摂生の万延(食べ過ぎ・偏食・早食いなど)、運動不足のほか、 ストレスも大きいでしょう。食べ過ぎをして血糖値が一時的に上昇しても、正常範囲にスッと戻れば問題はありません。 けれども、こうした悪習慣が積み重なると、高まった血糖値を下げるのは容易ではなくなり、糖尿病へと足を踏み入れることに。 血糖値を下げる唯一のホルモン(身体の機能を調節する物質)である、インスリンの分泌量が徐々に不足していき、 さらに効き目も悪くなっていく悪循環にはまってしまうからです。 食事療法を頑張っても血糖値がなかなか下がらないという声をよく聞くのは、 このインスリンの量と効き目の低下が解消されていないためです。


■インスリンはいわば血糖の配達人

私たちが食べたものは、胃腸で消化されてブドウ糖などに分解された後、小腸から吸収されます。 ブドウ糖はさらに肝臓に運ばれ、そこから血流に乗って全身へ放出されます。この時に血糖値が上昇するわけです。 インスリンはこの血糖値の上昇を追いかけるように、膵臓のランゲルハンス島にβ細胞から分泌されます。 このランゲルハンス島はいわば細胞の集団で、膵臓全体に散在しており、発見者であるドイツ人の医師・ ランゲルハンスの名前からそう呼ばれています。分泌されたインスリンは、血糖を筋肉へ届けてエネルギー源として活用させるほか、 余った血糖を肝臓や脂肪組織に蓄えさせる働きもします。 いうなれば、インスリンは血糖を運搬する配達人で、その受け取り手は筋肉、肝臓、脂肪組織であるということ。 こうしたインスリンの働きにより、食後に上昇した血糖値は、2〜3時間で正常範囲へ下落するのです。

例えば、空腹になって血糖値が低くなると、体内ではグルカゴン、アドレナリン、コルチゾールなど複数のホルモンが 血糖値の上昇に働きかけます。肝臓に蓄えられているグリコーゲンをブドウ糖に分解させて、血液中に放出するわけです。 一方で、血糖値を下げるホルモンといえば、インスリンただ一つしかありません。 体の機能維持に実に貴重な存在であり、だからこそ、インスリン分泌不足や効き目の低下は、 糖尿病の悪化に直結することとなり、全身に重大な合併症を起こしてしまうのです。