不眠と糖尿病

糖尿病の人が不眠を放置すると危険で、インスリンの働きが衰え、起床時から高血糖が終日続きます。 不眠だと血糖値が上がりやすく、インスリンを分泌する膵臓にも負担がかかると推測されるからです。


■不眠の人は血糖値が上がりやすい

「寝床に入っても、何時間も寝付けない」「夜中に何度も目が覚める」「睡眠時間は十分とっているはずなのに、昼間に眠くなる」 こういった不眠の悩みを抱えている人は、多いのではないでしょうか。 実際、ある製薬会社が不眠に関する調査を行ったところ、42.2%もの人に不眠の疑いがあったそうです。 さらに、不眠の疑いがある人の中でも、睡眠薬を飲んだり、専門医の診察を受けたりするなど、 何らかの解決策を取っている人は51.5%しかいないこともわかりました。 言い換えれば、不眠の人の約半数は特に対策も取らず、そのまま放置しているというわけです。

皆さんは、不眠をほかの病気と比べて軽く見ているかもしれません。しかし、それは大きな間違いです。 不眠を放置すれば、疲労がたまるだけでなく、心身の健康を確実に損ないます。 その一例が、不眠の人は血糖値が上がりやすい、つまり糖尿病が悪化しやすいというものです。 米国・シカゴ大学医療センターの研究グループは、40人の糖尿病の患者さんを対象として、 睡眠中の熟睡度を特殊な装置で調べたり、問診を行ったりして睡眠の質を評価しました。 同時に、血液検査でインスリンの分泌量と血糖値を測定し、睡眠の質との関連を調べたのです。 その結果、不眠と判断された患者さんは、睡眠が正常な患者さんに比べて朝食前の血糖値が平均で23%高く、 空腹時のインスリンの分泌量も平均で48%高いことがわかりました。 つまり、不眠だと血糖値が上がりやすく、インスリンを分泌する膵臓にも負担がかかると推測されるのです。 さらに、不眠と判断された患者さんは、インスリン抵抗性も悪化していました。 睡眠が正常な患者さんに比べて、実に82%も高くなっていたのです。 この研究結果は、2011年に、米国の糖尿病学会が発行する医学誌に掲載されました。



■血糖値を上げるホルモンが増える

一方、日本の旭川大学などの研究グループは、健常者を対象にして、不眠と糖尿病の関係を調べています。 研究グループは、35〜55歳の男女3570人を対象として、事前に睡眠時間や睡眠の満足度などの聞き取りを行いました。 その後、4年間に渡る追跡調査を行ったところ、121人が糖尿病を発症したといいます。 この調査によると、睡眠時間が5時間以下の人は、7時間を超える人と比べて、糖尿病を発症する危険度が約5.3倍も高かったのです。 また、睡眠不足を感じている人は、そうでない人より約6.7倍、糖尿病を発症する危険度が高いこともわかりました。

こうした研究により、不眠を放置すれば糖尿病になりやすいことが実証されたといえます。 不眠が糖尿病を発症・悪化させる理由については、ストレスが関係しているという説が有力です。 私たちは、昼間活動しているとき、多かれ少なかれストレスを受けます。 不眠に悩んでいる人は、そのストレスが十分に解消されません。 すると、脳の下部にある脳下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)などの量が増え、 その刺激でコルチゾールというストレスホルモンが活発に分泌されます。 コルチゾールには血糖値を下げる働きがあるため、不眠の人は血糖値をうまくコントロールできず、 高血糖の状態が起床時から終日続くと考えられるのです。 そのうえ、糖尿病の人はのどの渇きや夜間頻尿などの症状が現れるため、不眠が慢性化しやすいという問題もあります。 そうなれば、糖尿病の悪化もさらに進んでしまうでしょう。



■不眠は癌や鬱も招く

不眠の悪影響はこれだけではありません。免疫力を担う血液中の白血球の働きが衰えます。 実際、不眠の人は癌になりやすいという報告もあるのです。 また、不眠が続くと自律神経の働きも乱れ、睡眠中の血圧が下がりにくくなるため、高血圧になる危険も高まります。 さらに、鬱も招くといわれています。そのため、不眠の人はすぐ解消に努めてください。 睡眠時無呼吸症候群などの病気の可能性もあるので、まずは専門の医師の診察を受けることです。 それ以外にも、夕食を就寝前の2時間前までに済ませる、寝る前に熱めの風呂に入らない、ふだんから体をよく動かす、 起床後はすぐに太陽の光を浴びるなど、自分でできる対策も行いましょう。