糖尿病神経障害

糖尿病の合併症の中でも、最も患者が多いのが糖尿病神経障害です。 糖尿病神経障害は症状を自覚しにくく、医師も診断するのが難しい合併症でもあります。 糖尿病神経障害を発見するには早期に検査を受けることです。
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■糖尿病糖尿病神経障害

●「糖尿病糖尿病神経障害」とは?

糖尿病の合併症には、自覚しにくい症状が多くあります。 そのためか、医師と患者の自覚との間には、大きな差があります。 そのなかでも、糖尿病神経障害による症状はさまざまで、診断の難しい合併症です。 糖尿病神経障害は、血液中の糖が多すぎたり(高血糖)、血行障害のため、末梢の神経線維が変性したり脱落して発症します。 3大合併症のなかで最も患者数が多く、一般に糖尿病を発症して5年ほどで現れ始め、 10年たつと患者の7割以上に起こるとされる、非常に発症頻度の高い合併症です。 糖尿病神経障害を発症すると、痛みやしびれなどの症状に悩まされ、生活の質も損なわれます。 早い時期から、医師とともに対応していくことが大切です。



◆糖尿病神経障害の症状

糖尿病神経障害は、合併症の中では一番早期に出現するといわれています。 糖尿病と診断される前に出ていることもあるようです。 ですから、合併症ではなく随伴症状といってもよいかもしれません。 糖尿病神経障害は知覚障害と自立糖尿病神経障害に分かれます。 典型的な知覚障害の症状は足のしびれです。正座をしていないのに両側左右対称に足の先のほうからしびれをきたします。 進行するにつれて徐々に上がっていき、足の裏に薄皮が一枚くっついている感じや、足が針のむしろの上を 歩かされているような痛みがあるという人もいます。足がつってしまうのも糖尿病神経障害の一つです。 神経と密接な関係がある筋肉の萎縮も病状が進行してくると出てきます。 下腿、臀部の筋肉の萎縮及び握力の低下が見られます。自律糖尿病神経障害が見られるのも糖尿病神経障害の特徴の一つです。

▼性機能障害
性機能障害(ED)も自律糖尿病神経障害の一つです。バイアグラ以外にもEDの薬が最近増えていますが、 糖尿病性糖尿病神経障害が進行している場合は効果がありません。

▼膀胱症状
病名は無力性膀胱、神経因性膀胱といわれます。尿意がわからなくなり、かなりの尿をトイレに行かずに ためてしまっても平気な人がいます。尿失禁をしたり、腎臓に負担をかけてより早く腎不全が進行することも あります。

▼消化器症状
極端な便秘症や下痢症に悩まされる人がいます。便秘も大量に下剤を飲まないと便通がつかないこともよくあり、 下痢も程度がひどく、普通の下痢止めでは聞かないような症例もあります。

▼立ちくらみ
専門的には起立性低血圧といい、夜中や午前中に歩行時立ちくらみが見られることがあります。 ひどいと転倒してしまうこともあります。

▼発汗異常
発汗調節も自律神経が行っているので、暑くもないのに汗を非常にかいたり(特に海外ではチーズを食べたときに 多いとされている)、逆に冬乾燥してくると皮膚が荒れやすくなります。特に自律糖尿病神経障害がある人は 踵に亀裂が生じ、足潰瘍の原因になるといわれています。

▼無自覚性低血糖
低血糖がわかりにくくなります。ひどいときは血糖が20〜30mg/lまで下がっても気が付かないため、 意識障害まで出てくることもあります。そのほかに自律糖尿病神経障害ではありませんが、眼球を動かす神経が障害され 複視が生じたり、眼瞼の挙上をつかさどる神経が侵されるために眼瞼下垂が見られる症例もあります。

▼足病変
熱さや痛みの感覚が麻痺してくるので、低温熱傷や足にとげが刺さっていてもわかりにくくなります。 そのため足病変に罹患しやすくなってきます。足の筋肉が萎縮してくると足趾が背屈してきます。

痛みなどを感じる感覚神経と手足などを動かす運動神経が障害されて起こる症状には 「手足のしびれ・感覚低下・こむら返り・痛み」などがあり、 進行すると、四肢の末端が壊死し腐敗する「黄疸」が起こることがあります。 血圧の調節や臓器の働きなどをつかさどる「自律神経」が障害されて起こる症状には 「立ちくらみ・発汗障害・便秘・下痢・勃起障害・排尿障害」などがあります。


◇感覚神経の障害の進み方

感覚神経の障害は、一般的には次のように進行します。

▼無症状期
自覚症状はありませんが、検査によって、糖尿病神経障害を発見することができます。

▼前期
つま先や足の裏に”ジンジン”するしびれや灼熱感などの異常感覚が現れます。 ”ピリピリ”といった痛みを感じることもあります。

▼中期
異常感覚の範囲が広がり、膝から上の脚や指先にも異常感覚が起こってきます。

▼後期
痛みなどの感覚を感じなくなってきます。これは、神経線維が変性したことによるもので、 糖尿病神経障害が進行したことを意味します。例えば、足に傷があっても感覚が鈍っているため気付かなくなります。 この傷から「壊疽」が起こり、血流障害や感染などが加わって、下肢を切断しなければならなくなることもあります。

糖尿病神経障害は、中期くらいまでなら改善が期待できますが、 後期まで進むと神経線維の変性や脱落が起こるので、回復は難しくなります。



●糖尿病神経障害の発症機序

高血糖が長く続くとたまってくる物質、血糖の分解産物である「アルドース」が原因の一つとされています。 現在これをためないようにする薬が出ています。 また、神経も細い血管で栄養を補給されていますが、血糖が高いと、これらの細い血管が詰まりやすくなって 栄養が補給されなくなり、糖尿病神経障害が出現するのではないかとされています。

◆アルドース還元酵素阻害薬

アルドースの蓄積を防ぐ薬です。原因の根本治療法として当初注目されましたが、 全ての糖尿病神経障害に効果が出るわけではありません。


●糖尿病神経障害の検査

糖尿病神経障害は、早期に見つけ出して治療することが大切ですが、次のような検査を行うことで 早期発見が可能です。

▼アキレス腱反射検査
椅子の上に膝を立てて後ろ向きに座り、脚をリラックスさせた状態で、 医師がアキレス腱を専用の器具で叩きます。健康な人では、その刺激が神経を通して 脚に伝わるので足先が自然に動きますが、糖尿病神経障害があるとうまく動きません。
▼振動覚検査
椅子に座り、足を伸ばします。伸ばした足の内側のくるぶしが脚の親指に、 振動を与える専用の器具を医師が当てます。一般的に、健康な人は10秒以上感知できますが、 糖尿病神経障害があるとそれより短くなるか、まったく感じなくなります。

これらの検査によって、無症状期の糖尿病神経障害も発見が可能です。 早くから対処するほど改善しやすいので、糖尿病患者の方は、 自覚のないうちから積極的に検査を受けるとよいでしょう。