糖尿病網膜症

糖尿病が原因で起こる糖尿病網膜症は、視力に影響が現れないまま進行し、 突然失明することもある病気です。 糖尿病網膜症は内科では発見しづらいので、糖尿病と診断されたら、 自覚症状がなくても眼科を定期的に受診し、目の検査を受けることが大切です。
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■「糖尿病網膜症」とは?

糖尿病によって、網膜の毛細血管が障害されて起こる

近年、日本において、中途失明の原因で第2位(平成17年度調べ)となっているのが糖尿病の合併症の一つである 『糖尿病網膜症』で、 毎年3000人以上にものぼります。 「網膜」は目の奥のほうにあり、外から「水晶体」 を通して目に入ってきた光が像を結ぶ部分で、目をカメラに例えると”フィルム”に相当します。 網膜には酸素や栄養を運ぶための多くの毛細血管が集まっていますが、 糖尿病になって血液中の糖が増加すると(高血糖)、網膜の毛細血管が障害されてもろくなったり、詰まったりします。 それが引き金になって出血などが起こり、突然失明することもあります。これが、糖尿病網膜症です。

毛細血管は、糖尿病を発症してから数年〜十数年かけて徐々に障害され、多くの場合、ある日突然、 急激な視力低下が起こります。 糖尿病網膜症は、痛みやかゆみなどの症状がなく、初期のうちは視力の低下なども現れないため、 眼底検査(眼底鏡を用いて眼の奥を光を当てて調べる検査)を受けないと、初期の網膜症は発見できず、 病状の進行に気づかないことが多いので、発見が遅れがちです。 そのことが、視覚障害まで進行する人が多い原因の一つと考えられます。 糖尿病網膜症は、糖尿病になってから5年以上の患者の15%〜20%に現れます。 20年以上では60%の人に発症し、そのうちの15%は、視覚障害を起こすおそれがあるところまで進行しています。

このように、糖尿病が原因で突然に失明することもあるため、早めの対処が必要です。



●糖尿病網膜症の進行・病期

気づかないうちに進行し、出血すると突然視力が低下する

糖尿病は、血糖値が高い状態が続く病気です。血糖が多いと、全身の血管が障害されます。 網膜の毛細血管も例外ではなく、糖尿病の進行に伴ってもろくなったり、小さなこぶができたりします。 毛細血管が破れ、網膜に小さく出血することもあります(眼底出血)。
網膜症の病期は、進行状況から「単純網膜症」「前増殖網膜症」「増殖網膜症」の3段階に分かれます。

▼単純網膜症
網膜に栄養を補給している毛細血管に瘤ができたり、ここが破れて「点状出血」が起こったり、 血液が吸収されて「白斑」ができたりします。出血やむくみが黄斑部に起こると、視力が低下することがあります。

▼前増殖網膜症
中期の前増殖網膜症になると、線状出血や網膜最小血管異常がみられるようになります。 血管が詰まり、新鮮な酸素や栄養が十分に網膜に運ばれなくなるため、それを補うために新たな血管がつくられます。 この「新生血管」は、非常にもろくて破れやすい血管です。 光凝固を行う必要性が出てくる時期です。

▼増殖網膜症
後期の増殖網膜症になると、新生血管が破れて、水晶体と網膜の間を満たしているゼリー状の「硝子体」 に出血を起こし(硝子体出血)ます。すると、血液によって光がさえぎられ、網膜に届かなくなるため、 突然視力が低下し、飛蚊症や赤いカーテンがかかったように見え、失明します。 さらに、新生血管が作られるときに網膜の上にできる薄い膜(増殖膜)が網膜をひっぱり、 「網膜剥離」を起こすこともあります。また、白内障や緑内障にかかるリスクも高くなります。

単純網膜症が発症するまでに5〜10年かかり、血糖値のコントロールが悪いと、単純網膜症から前増殖網膜症に 2、3年で進行し、さらに増殖網膜症へ1、2年で進展します。網膜症は、このように段階を踏んで進行していき、 単純網膜症から前増殖網膜症の前期の段階では自覚症状がなく、視力に影響しませんが、 硝子体出血(増殖網膜症の段階)を起こしてくると見えにくくなってきます。 いったん硝子体出血を起こすと、基本的にはそれを治す薬はなく、 自然に吸収されるのを待つしかありません。また、出血量が多い場合は手術をします。 硝子体出血を繰り返しているとだんだん視力が低下していきます。



●最後に

日本では眼科での治療によって、糖尿病網膜症による失明率は減少しています。 しかし、視覚障害を防ぐためにも、糖尿病と診断された場合は、 糖尿病網膜症を発症する前から定期的に眼科を受診しましょう。 糖尿病網膜症は、早めに発見できれば治療法の選択肢も広がり、失明を防げることもあります。 血糖のコントロールに努め、定期的に検査を受けることが大切です。


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