糖尿病の薬物療法

生活習慣の改善だけでは、血糖が十分にコントロールできない場合は『薬物療法』を始めます。 糖尿病の薬物療法に用いる「経口血糖降下薬に」は、 インスリンの分泌を促進する「スルホニル尿素(SU)薬、速効型インスリン分泌薬」、 インスリン抵抗性を改善する「ビグアナイド薬、チアゾリジン薬」、 食後の血糖値の上昇を緩やかにする「α−グルコシダーゼ阻害薬」などがあります。
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■糖尿病の薬物療法では・・・

糖尿病の治療では、「HbA1cを6.5%未満に下げる」ことを目安に、血糖コントロールを行います。 インスリン依存型糖尿病(1型糖尿病)では、ただちに 「インスリン注射療法」を開始します。 インスリン非依存型糖尿病(2型糖尿病)では、主な引き金である生活習慣の乱れを改善することが、 何より重要になります。通常、まず生活習慣の改善(食事療法と運動療法)を2〜3ヶ月正しく行い、 それでも血糖コントロールが不良の場合には、「経口血糖降下薬」を使います。 それでも十分な効果が得られなければ「インスリン注射療法」が必要になります。

「インスリン」は「膵臓」から分泌されるホルモンで、血糖値の変動に深く関わっています。 遺伝的な体質によってインスリンの分泌能力が低下する「インスリン分泌不全」と、 「肥満」などインスリンの働きが悪くなる「インスリン抵抗性」が重なることで、血糖値が上がります。 血糖値が高い状態(高血糖)が長く続くと、インスリン分泌不全やインスリン抵抗性が悪化し、 血糖値がさらにあがるという悪循環が起こります。この悪循環から抜け出すためには、 適切な薬物療法を行う必要があります。

糖尿病の薬物療法に用いる「経口血糖降下薬」は、主な作用により「インスリンの分泌を促進する薬」 「インスリン抵抗性を改善する薬」「糖の吸収を遅らせる薬」に分類されます。 病態に応じて単独で用いたり、組み合わせて用いられます。



●その他の薬

糖尿病の合併症である神経障害の治療に、アルドース還元酵素阻害薬の「エパルレスタット」 や神経障害治療薬の「塩酸メキシレチン」などが用いられています。 腎症の治療に、「ACE阻害薬」の「塩酸イミダプリル」(1型糖尿病の場合)や アンジオテンシンU受容体拮抗薬の「ロサルタンカリウム」(2型糖尿病の場合)などを 用いたり、末梢神経障害の治療に「塩酸イソクスプリン」などを用いることもあります。


●糖尿病の進行と治療薬の選択

糖尿病は進行する病気で、罹患年数と共に膵臓のインスリン分泌が低下し、血糖値が上がってきます。 スルホニル尿素薬は血糖値をよく下げますが、糖尿病が進むにつれて効果が薄れてきます。 効果が薄れてきた場合は、まずDPP-4阻害薬の追加を考えます。2つの薬は作用が異なるため、併用することで作用が重なり、 血糖値のさらなる低下が期待できます。ただし、低血糖を起こす可能性もあるので、DPP-4阻害薬を併用する場合は スルホニル尿素薬を減量しなくてはいけない場合もあります。 スルホニル尿素薬を長く使っている場合、一気にDPP-4阻害薬のみの使用に切り替えると血糖コントロールが悪くなることがあります。 ただし、初めて糖尿病の薬を使う人では、DPP-4阻害薬だけを用いることがよくあります。 2014年には「SGLT-2」阻害薬」という新しい薬が登場する予定です。 この薬は血液中の過剰なブドウ糖を尿中に排出させて血糖値を下げます。 インクレチン関連薬以上に体重を減らす効果があるという点でも注目されています。


●薬を飲むときに気をつけること

決められたタイミングに、毎日欠かさず服用する

糖尿病の薬は、毎日しっかりと服用を続ける必要があり、種類によって作用の仕方がさまざまで、飲み方も異なります。 そして大切なのは薬を飲むタイミングです。例えば「α-グルコシターゼ阻害薬」は、食前に飲まないと効果が期待できません。 飲み忘れた場合の対処法は、薬によって異なるため、薬について担当医から説明をよく聞き、 飲み忘れたときの対処法なども相談しておきましょう。 飲み忘れを防ぐために、常に1回分を余分に持ち歩くようにすることも大切です。 また、副作用が現れた場合は、すぐに担当医に相談してください。

また、糖尿病の薬は、服用時間を守り、食事は適量を規則正しく摂ります。 食事量の変動が大きかったり、服薬するタイミングを変えたりすると、 意識を失うこともある『低血糖』を起こす危険性がありますし、 十分な効果が得られないこともあるためです。 薬を効果的に用いたり、低血糖を防ぐためにも、自分が飲んでいる薬の作用の仕方や特徴をよく理解することが大切です。



●効果を確認するには

定期的に受診し、血液検査を受けてヘモグロビンA1cの値を調べる

薬物療法は、定期的に「血液検査」を行い、薬の効果を確認しながら進めます。 いつも通りに服薬、食事をしてから、食後1〜2時間の血糖値を測る方法もありますが、血糖値は刻々と変化しているため、 効果を確実に確認するのは困難です。そこで、血糖がコントロールできているかどうかを知る目安として、 主に「ヘモグロビンA1c」を用います。血液中のヘモグロビンA1cの割合を調べることで、 採血2ヶ月前から採血時までの血糖値の平均的な状態を知ることができます。 定期的な血液検査により、ヘモグロビンA1cを調べ、評価基準の「優」または「良」を目指します。


  不可
不十分 不良
HbA1c(%) 5.8未満 〜6.5未満 〜7.0未満 〜8.0未満 8.0以上

◆血糖値がなかなか下がらない場合には

生活習慣の改善状況をもう一度見直すほか、経口薬の量や種類を増やします。 それでも目標に達しないようであれば、インスリン注射の使用も検討されます。
薬物療法を始めても、生活習慣の改善で血糖コントロールができるようになれば、薬の量を減らしたり、中止できる可能性もあります。 それだけに、生活習慣の改善とその維持は重要なのです。