糖尿病の薬物療法「インクレチン関連薬」

●糖尿病の治療薬は、主にインスリンの分泌を促進したり、働きをよくします。
●2009年にインスリンの分泌を促進する『インクレチン関連薬』が登場しました。
●インクレチン関連薬は、血糖値が上昇した時に血糖値を下げます。
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■糖尿病の薬物療法「インクレチン関連薬」

●糖尿病の治療薬

経口薬と注射薬があり、さまざまな作用で血糖値を下げる

糖尿病の治療薬には、経口薬と注射薬があります。 経口薬には、膵臓に作用してインスリンの分泌を促す「インスリン分泌促進薬」や、 肝臓や筋肉、脂肪組織に働いてインスリンの働きを改善する「インスリン抵抗性改善薬」、 小腸に作用してブドウ糖の吸収を遅くする薬があります。 注射薬には「インスリン製剤」があり、膵臓から分泌されるインスリンの働きをします。
そして、2009年からは『インクレチン関連薬』が登場しました。



●インクレチン関連薬とは?

インクレチン関連薬には、「DPP-4阻害薬」「GLP-1受容体作動薬」があります。 どちらもインスリンの分泌を促進する働きを持っていますが、血糖値を下げる仕組みは従来から使われている インスリン分泌薬とは異なります。

▼血糖値が高いときにインスリン分泌を促進する
インスリン分泌促進薬で、従来からよく使われている「スルホニル尿素薬」は、 血糖値に関係なくインスリンの分泌を促進します。 一方、インクレチン関連薬は、血糖値が高いときにインスリンの分泌を促進します。 そのため、低血糖が起こりにくくなるのです。

▼グルカゴンの分泌を抑制する
膵臓は血糖値を上げる「グルカゴン」というホルモンも分泌しています。 健康な人は、血糖値が高い状態ではグルカゴンの分泌が抑えられていますが、 糖尿病がある人では、分泌量が増えてしまいます。 インクレチン関連薬には、膵臓からのグルカゴンの分泌を抑える働きもあります。

このようにインクレチン関連薬は、インスリンの分泌を増やす一方で、グルカゴンの働きを抑えるという 2つの作用によって血糖値を低下させます。



●インクレチン関連薬の実際

糖尿病の原因によって使い分けられることがある

2つのインクレチン関連薬を従来からよく使われているスルホニル尿素薬と比較すると次のような違いがあります。

▼DPP-4阻害薬の場合
スルホニル尿素薬と同じ経口薬ですが、血糖値を下げる効果は同等かやや弱まります。 ただし、スルホニル尿素薬に見られる低血糖や体重の増加は起こりにくくなります。

▼GLP-1受容体作動薬の場合
注射薬で用いられます。血糖値を下げる効果はスルホニル尿素薬より強くなります。 低血糖が起こりにくく、食欲を抑え、体重の減量効果も期待できます。

◆他の治療薬と併用される場合が多い

インクレチン関連薬は、従来のインスリン分泌促進薬や他の治療薬と併用されることも多く、 例えば次のように用いられることがあります。

インスリンの分泌不足が原因の場合は、まずインスリン分泌促進薬が使われます。 それでも十分な効果が得られない場合は、スルホニル尿素薬とDPP-4阻害薬が併用されたり、 異なる作用で血糖値を下げる薬が追加されたりします。

また、インスリン抵抗性が原因の場合は、最初にインスリン抵抗性改善薬が使われますが、 効果が不十分な場合にはDPP-4阻害薬やスルホニル尿素薬などが追加されます。 体重が増加したり、血糖値が再び上がってきた場合には、DPP-4阻害薬やスルホニル尿素薬を、 体重の減量効果も期待できるGLP-1受容体作動薬に切り替えることがあります。

このほか、患者さんの病状に合わせてさまざまな組み合わせで用いられます。

◆併用する場合は低血糖に注意する

インクレチン関連薬は低血糖の起こりにくい薬ですが、他の薬と併用する場合は血糖値が下がりすぎる場合があります。 スルホニル尿素薬と併用する場合は、スルホニル尿素薬の量を減らして使われます。 高齢者や腎臓の働きが低下している人は、特に注意が必要です。