インスリン療法

インスリン療法』は、インスリン製剤を患者自身が自分で注射する方法で、 高血糖状態が著しい場合、経口血糖降下薬では血糖コントロールが不十分なときなどに用いられます。 インスリンを皮下に直接注射する分、高い効果が期待できますが、使用方法に気をつけないと、 「低血糖」になることもあります。
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■インスリン注射を行う上で

使用するインスリンの特徴や低血糖への対処法を知る

注射器には従来使用されているものと「ペン型注射器」があります。 注射に用いるインスリン製剤は、注射後に効果が長く持続するタイプや、短時間で即効的に効くタイプなど、 いくつかに分けられます。また、2型糖尿病の場合、自分自身のインスリンの分泌量や、インスリンの働きの程度によって、 注射する量も異なります。
使用するタイミングは、さまざまですが、最近ではより効果的に血糖コントロールができる「頻回注射療法」が注目されています。 ただし、高齢で、患者さん本人ではなく家族が注射している場合などでは、多くは1日1〜2回注射する方法が行われています。


●インスリン注射の注意点

▼使用するインスリン製剤の特徴を知る
自分が使用しているインスリン製剤の効果の出方を理解しておきます。 また、注射する量、回数、タイミングなどは、必ず担当医の指示に従ってください。

▼運動でよく使う部位に注射するのは避ける
運動で筋肉への血流量が変動すると、インスリンの効きに影響が出ます。

▼注射部位は毎回変える
前回注射した場所から2cmずつずらします。

▼注射針は毎回交換する
使用済みの針は、瓶などに入れて医療機関に持っていきます。

このほか、「低血糖」の症状を知っていおいたり、 低血糖になった場合に備えることも必要です。



●合併症

血糖をきちんと管理して予防しつつ、検査も受ける

インスリン注射を的確に行って血糖コントロールを維持すれば、合併症が防げるという研究が数多く発表されています。 しかし、治療の開始が遅れてしまった場合、合併症を起こす可能性があります。 下記の検査を定期的に受け、合併症の早期発見に努めましょう。 合併症が起こった場合は、進行を阻止するため、必要に応じて眼科など、他の診療科と内科が連携して治療を行います。


何を調べているのか 主な検査
動脈硬化の程度 頸動脈エコー、心電図、エックス線検査
神経障害の有無 アキレス腱反射検査、振動覚検査
網膜の状態 眼底検査
腎機能の程度 尿検査・・・・・尿中アルブミン、たんぱく尿の有無
血液検査・・・・・血清クレアチニン


●インスリン製剤の早期導入

血糖の管理を難しくさせる糖毒性の悪循環を解消する

従来、インスリン製剤は糖尿病が進行し、膵臓からのインスリンの分泌がかなり低下して状態になってから使われていました。 しかし、最近では、インスリンの分泌が十分に保たれていても、「糖毒性」がある場合には、 インスリン製剤を使って血糖値を下げるようになってきています。

◆糖毒性とは?

糖尿病は、インスリンの分泌低下やインスリン抵抗性によって起こります。 血糖値が高くなると、インスリンの分泌がさらに低下したり、インスリン抵抗性が悪化して、 血糖値がますます高くなるという悪循環が起こってきます。 高血糖によってこうした悪循環に陥ることを「糖毒性」といいます。 糖毒性があると、血糖のコントロールは難しくなります。 そのため強い作用のあるインスリン製剤を使って、確実に血糖値を下げることが必要になってくるのです。 糖毒性がなくなれば、インスリンの分泌が回復したり、悪化したインスリンの抵抗性が改善されてきます。 その結果、インスリン製剤の使用を中止して、経口薬による治療に戻ることもありますし、 場合によっては食事療法と運動療法だけで、血糖のコントロールが可能になることもあります。


●確実に血糖値を下げるために

症状に応じて積極的にインスリン製剤を取り入れる

インスリン製剤を使うことに抵抗感がある人は少なくありません。 しかし、インスリン製剤は、糖尿病の治療薬の中で血糖値を下げる効果が最も強い薬です。 早期から使うことで、膵臓を休ませ、機能を長続きさせることも期待できます。 早期のインスリン製剤の導入は、長い治療が必要な糖尿病の患者さんにとって非常に有効な治療法の一つです。


◆インクレチン関連薬との併用

インスリン注射を1日に1〜2回行っている患者さんでは、食後の血糖値の上昇を抑えるためにDPP-4阻害薬を併用することが よくあります。インスリン注射単独に比べて、低血糖が起きにくく体重も増えにくいメリットがあります。 最近では、GL-1受容体薬との併用も可能になりました。食前の血糖コントロールは持効型インスリン製剤で、 食後の血糖値の上昇はGLP-1受容体作動薬で抑えます。どちらも朝1回注射をします。 インスリン製剤の使用をやめてGLP-1受容体作動薬のみに替えるのは、血糖コントロールが悪化することが多いので勧められません。