1型糖尿病

子供に多い「1型糖尿病」は、生活習慣とは関係なく発症します。 インスリン製剤の注射で血糖値をきちんとコントロールすれば、生活上の制限はありません。 病気を正しく理解し、適切に対処していきましょう。
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■1型糖尿病

●1型糖尿病とは?

膵臓のβ細胞が壊れ、インスリンが分泌されなくなる

糖尿病は、原因によって「1型糖尿病」「2型糖尿病」などに分けられます。

▼2型糖尿病
糖尿病になりやすい「体質」に、「食べ過ぎ」や「運動不足」などの生活習慣が加わることによって、 インスリンの分泌や作用が徐々に低下して発症します。 家族に糖尿病の患者さんがいると発症しやすく、「肥満」が発症に深くかかわっています。 若年でも発症しますが、40歳以上の中高年に発症することがほとんどです。


▼1型糖尿病
インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が何らかの原因で破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなって 発症してくる糖尿病です。β細胞が破壊される原因は、「自己免疫」機序が大半です。 これは、本来、体内の異物を攻撃して排除する「免疫」の仕組みが、 自分のβ細胞を誤って攻撃してしまうという現象です。 食べ過ぎ、運動不足、家族に糖尿病の患者さんがいるかどうかなどは、発症に関係ありません。 発症のピークは、小児を含む10歳代にありますが、どの年代でも発症する可能性があります。


◆症状と合併症

1型糖尿病の症状は、基本的には2型糖尿病と同様です。2型糖尿病は、一般に症状のないまま進行し、 症状が現れるのはかなり進行してからです。一方、1型糖尿病では急激に高血糖が起こり、 多くの場合、初期から自覚症状が現れます。

▼発症時
「のどが渇く」「多尿」「だるい」「体重減少」などが、初期の主な自覚症状です。 これらの高血糖症状が起こった場合は、医療機関を速やかに受診してください。


▼症状が進行すると・・・
「昏睡」「呼吸困難」などが起こることがあります。血中のインスリンが極端に不足すると、 血液中にはブドウ糖が大量に存在するものの、全身の細胞では不足した状態になります。 細胞内のエネルギー不足が起こり、代わりに脂肪を用いてエネルギーを作り出します。 この時血液中に「ケトン体」という物質が増え、増加するにしたがって血液は酸性に傾いていきます。 これが「ケトアシドーシス」という状態で、昏睡や呼吸困難を引き起こす原因になります。


▼長期に高血糖が続くと
慢性合併症が起こります。頻度が高いのは「神経障害」「網膜症」「腎症」で、 糖尿病の三大合併症と呼ばれています。これは2型糖尿病の場合と同様です。 また、心筋梗塞や脳梗塞が起こることもあります。


●1型糖尿病の治療

インスリン製剤の注射で血糖値を下げる

1型糖尿病では、毎日、注射によってインスリンを補う「インスリン療法」を行います。 血糖値をきちんとコントロールすれば、合併症を防げることがわかっているので、欠かさずインスリンを補うことが何より重要です。 最近では、取扱いの簡単なペン型注射器、さらに使い捨てのペン型注射器が主に使用されます。

健康な人のインスリン分泌は、常に一定量分泌されている「基礎分泌」と、食事による血糖上昇によって分泌される 「追加分泌」に大別されます。インスリン療法は、健康な人の血中インスリン濃度の変動に近づくように、 異なった種類のインスリン製剤を組み合わせて行います。 基礎分泌を補うには、効果が持続する「中間型」か「持効型溶解」インスリン製剤を用い、追加分泌を補うには、 効果がすぐに現れる「速効型」か「超速効型」インスリン製剤を食前に用います。 また、両方を行う「混合型」インスリン製剤を用いて行うこともあります。

2型糖尿病の治療で基本となる「食事療法」や「運動療法」は、1型糖尿病の治療では特に必要ありません。 家庭での食事や外食、給食やお弁当などは一般の子供と同じで構いませんし、運動の追加や制限もありません。 ただし、不規則な生活、過食や偏食、運動不足などがよくないことは、糖尿病のない子供と同じです。

◆低血糖に注意

インスリン療法を行っているときには、「インスリンの量が多すぎた」「食事の量が少なすぎた」 「予定より激しい運動をした」などにより、血糖値が下がりすぎて、 低血糖が起こる危険性があります。 低血糖が起こると、小さな子供では、まず、「強い空腹感」「元気がなくなる」「顔が青白くなる」「手が冷たくなる」 などの症状が起こり、「いつもと違う」ことで周囲の人や家族が気付きます。 さらに血糖値が下がると、「声をかけても反応がない」「痙攣」「昏睡」などが起こることがあります。
低血糖に気づいた場合は、すぐにブドウ糖や砂糖などで糖分を補います。 ブドウ糖の錠剤やブドウ糖を含んだ飲料水などを利用しますが、小さい子供の場合は、保護者が砂糖を子供の口内に 塗ってもよいでしょう。症状が重篤な場合は、医療機関での治療が必要です。 低血糖が起きかけた時の「いつもと違う」子供の状態を覚えておき、早めに対処するようにします。

低血糖を防ぐためには、食事や運動の量、起床時間などに合わせて、インスリン製剤の種類、量、注射のタイミングなどを こまめに調節することが大切です。家庭や学校での日常的な活動のほか、運動会、修学旅行、キャンプなどの行事や 課外活動への対応を担当医とよく相談します。そして、これらを記録しておくと、次回に役立ちます。 また、学校内でインスリン注射をする場所や、低血糖が起きた時の対応をはじめ、他の子どもたちへの説明などについて、 子供の生活を考慮し、担当医を交えて、学校の担任や養護教諭などとよく話し合っておく必要があります。

◆今後の課題

小児期から1型糖尿病の治療を続けていると、「保護者が過保護になる」「子供の依頼心が強くなる」などの傾向が生じがちですが、 特別扱いせず、自立を促すように心の成長に気を配ることも大切なことになります。 「中学校の陸上部に入ろうとしたら断られた」「就職がうまくいかなくなった」などという事例も時にはありますが、 担当医に説明してもらったりして、学校や社会の理解を得ています。 実際には日常生活や旅行はもちろん、運動や仕事上の制限はほとんどありません。 1型糖尿病を上手にコントロールしながら成長し、会社勤めや自営業をはじめ、プロスポーツ選手、俳優、医師など、 さまざまな仕事を続けている人たちがいます。 病気を受け入れたうえで、子供が積極的に治療に取り組んで、インスリン治療の技術を身に付け、 自信を持って将来に向かって進んでいくことが望まれます。