高齢者の糖尿病対策『血糖値の急変に注意』

糖尿病では、血糖値が急に下がったり上がったりすることがあります。 特に高齢者では、急な変化が起こりやすいので、その対策は大変重要です。
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高齢者の糖尿病対策『血糖値の急変に注意』

■低血糖に注意

高齢者は典型的な症状が現れにくく、重症化しやすい

糖尿病の薬が効きすぎて、血糖値が下がり過ぎた状態が低血糖です。 糖尿病の治療の基本は血糖値を下げることですが、高齢者の場合は、低血糖が重症化しやすいことや悪影響が大きいことがわかっています。 低血糖の軽い段階では、通常は、発汗、不安な気持ち、動悸、手や指の震え、顔面蒼白などの症状が現れます。 この段階でブドウ糖を摂れば回復します。 しかし、高齢者の場合は、頭がくらくらする、体がふらふらする、めまい、脱力感などが起こります。 これらは低血糖の典型的な症状ではないため、気付かずに対処が遅れてしまいがちです。 低血糖が重症化して、意識がなくなり、痙攣や昏睡などを起こして病院に運ばれることもあります。

●重症の低血糖がもたらす悪影響

重症の低血糖は、ふらついて転倒し、骨折して寝たきりの原因となることがあります。 さらに、認知症脳卒中心筋梗塞にも繋がることがあります。 認知症は、低血糖のために、脳でブドウ糖が不足したり、脳の血管に炎症が起こったり、脳の活性酸素が増えたりすることなどが関係すると考えられます。 また、低血糖が起きた際に、分泌される血糖を上げるためのホルモンなどが、血管収縮や血圧上昇、血液凝固に繋がり、 脳梗塞や心筋梗塞の原因となる不整脈などが起こると考えられます。


●低血糖はどんな時に起こる?

低血糖は、糖尿病の薬が効きすぎた場合に起こります。高齢者は腎臓や肝臓の働きが低下しているため薬が長く体内にとどまり、 効きすぎて低血糖になる場合もあります。また、食事、運動とも関係しています。

▼薬との関係
重症の低血糖を起こしやすいのは、注射薬のインスリン製剤と飲み薬のスルホニル尿素薬です。 頻度は低いものの、飲み薬のグリニド薬も低血糖を起こす場合があります。 いずれも薬を使うタイミングを間違えたり、薬の量を誤って多く摂るとリスクが高まります。

▼食事と運動の関係
薬を正しく使っていても、食事を抜いたり、食事の時間が遅れたり、炭水化物の量がいつもより少なかった場合に、低血糖が起こりやすくなります。 食欲がなく食べられない場合も、注意しましょう。 また、家事やスポーツ、仕事などで体を動かし過ぎたり、長時間行った時も、低血糖になることがあります。

●低血糖の予防対策

低血糖を防ぐためには、まず、自分の薬が低血糖を起こしやすい薬かどうかを知っておく必要があります。 特に、スルホニル尿素薬については種類が多いので、担当医や薬剤師に確認しておきましょう。 食事はなるべく同じ時間に同じ量にし、炭水化物も過不足なく摂ります。 具体的な食事の内容は、担当医や管理栄養士と相談してください。 いつもより体を動かす場合はおにぎりなどの炭水化物を用意し、運動の途中で食べるようにします。
また、糖尿病の患者さんが感染症や発熱などで体調が悪い状態を、シックディといいます。 シックディでは、食欲不振、下痢、嘔吐などにより体内のブドウ糖が減るため、重症の低血糖が起こりやすくなります。 下痢や嘔吐があっても、できるだけ水分と炭水化物は摂るようにしましょう。 薬の使い方も普段と変わる場合があるので、事前に担当医にシックディの場合の指示を聞いておき、対応に迷う場合は担当医に連絡します。 患者さんや周囲の人が、低血糖が起こりやすい条件を知っておくことで低血糖の発症を防ぐことができます。

●低血糖が起こったら

低血糖に気付いたら、直ちにブドウ糖か砂糖を10〜20g摂ります。ブドウ糖や砂糖を含む飲み物でもよいでしょう。 15分間ほどたっても効果がなければ、追加補給します。それでも回復しない場合や、何らかの意識障害がある場合は医療機関を受診します。 袋入りやタブレットのブドウ糖が市販されています。低血糖を起こしやすい薬を使っている人は、常時携帯することをお勧めします。 車の運転時は、車内にブドウ糖や砂糖を常備しておき、低血糖が起こったらできるだけ安全な場所に車を止めてブドウ糖や砂糖を摂ります。 α-グルコシダーゼ阻害薬を使っている場合は、砂糖ではなくブドウ糖を摂りましょう。


■高浸透圧高血糖状態にも注意

気付かないうちに進行し、意識障害などが起こることも

高齢者は高浸透圧高血糖状態にも注意が必要です。高浸透圧高血糖状態とは、感染症などをきっかけに、脱水急激な血糖値の上昇が起こり、 血液の浸透圧が高くなる、すなわち血液が濃くなることです。強いストレスなどでインスリンの作用が低下し、血糖を上げるホルモンが出てくるため血糖値が上昇し、 著しい脱水状態も加わります。血糖値は600mg/dl以上となり、1000mg/dl以上になることもあります。

●高齢者は症状に気付きにくい

最初に現れる高浸透圧高血糖状態のの症状は、喉の渇きです。しかし、高齢者は喉の渇きを感じにくいので、水分をあまり摂らない傾向にあります。 感染症による発熱で水分が失われるうえ、食欲不振で水分が摂れなくなることもあります。 その結果、気付かないうちに重症化して、意識障害を起こすこともあります。
感染症のほか、脳血管障害、けが、手術、ステロイドホルモンの使用などもきっかけになります。 特に糖尿病のある高齢者は、肺炎尿路感染症などを起こしやすく発熱しやすいため、高浸透圧高血糖状態になりやすいという問題もあります。

●高浸透圧高血糖状態の予防

高浸透圧高血糖状態が疑われるような場合(下記参照)は、水分を十分補給して、直ちに医療機関を受診してください。 シックディのときは危険な状態に陥る場合があることを、患者さんや周囲の人がよく知っておくことです。 喉の渇きに注意して、こまめに水分を補給することも大切です。食欲不振や下痢、嘔吐だけでも、水分が不足します。 食欲がない場合も水分だけはしっかり摂りましょう。 原則、インスリンの注射で特に作用時間の長い製剤は食事が摂れなくても、自己判断で中止をしないことが大切です。 ふだんから糖尿病の治療をしっかり行い、高浸透圧高血糖状態を防ぎましょう。


高浸透圧高血糖状態