高齢者の糖尿病対策『食事・運動・薬のポイント』

糖尿病の治療は、生活習慣の改善を行い、必要に応じて薬を使います。 高齢者も基本は同じですが、高齢者ならではのポイントを押さえて血糖をコントロールしましょう。 食事療法では、高齢者は食欲が低下して低栄養になり、痩せてしまうことがあるので、低栄養にならないようにしましょう。 運動療法では、個人の体力に合わせて無理をせず、徐々に、さまざまな種類の運動をお行うことが大切です。 事前に担当医に相談してから、段階的に行って行くようにしましょう。 薬物療法では、糖尿病の薬には飲み薬と注射薬がありますが、副作用や飲み忘れに注意することが重要です。


高齢者の糖尿病対策『食事・運動・薬のポイント』

■食事療法

低栄養に注意し、痩せ過ぎないようにする

●食事療法の基本

いくつかのポイントを押さえて、食事を摂るように心がけます。

▼適切なエネルギー量
仕事や家事などで体を動かす程度に応じて、エネルギーを摂るようにします。 簡単にいえば、腹八分目を心がけて食べ過ぎないことが大切です。

▼よい栄養バランス
炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルを過不足なく摂るようにします。

▼食品の種類は多く
三食とも主食、主菜、副菜をそろえるようにすると、食品の種類が多くなり、栄養バランスがよくなります。

▼脂質は控えめに
脂質を摂り過ぎると、肥満や心筋梗塞などのリスクが高まります。特に、肉の脂などに多く含まれる飽和脂肪酸に注意しましょう。

▼食物繊維を多く
食物繊維は、食後の血糖値の急上昇を抑えます。野菜、海藻、きのこなどを多めに摂ります。

▼三食を規則正しく
朝食を抜いたり、夜中に摂るといった不規則な食事は、肥満や血糖値の上昇を招きます。

●高齢者の注意点

高齢者は、食欲が低下して低栄養になり、痩せてしまうことがあります。 1日1200kcal未満にならないようにしましょう。加齢に伴い筋肉が減ってくるため、タンパク質を十分に摂ることも大切です。 ただし、重症の腎臓病がある人は、タンパク質の摂り過ぎに注意します。 また、高齢者は、肉や脂肪が多い食事より野菜や魚の多い食事にすると、死亡リスクが減るといわれています。 なかでも、緑黄色野菜が不足すると、血糖コントロールや認知機能に悪影響があります。 緑黄色野菜を積極的に摂りましょう。
血圧の上昇を招き、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高める食塩の摂り過ぎにも注意します。 そのほか、糖質が含まれた飲料水を飲み過ぎないようにすることも大切です。 清涼飲料水や果物・野菜ジュースには糖質が多く含まれている場合があります。 こうした糖質の入った飲み物を飲み過ぎて、血糖値が上がり、具合が悪くなる例も少なくありません。


■運動療法

事前に担当医に相談してから、段階的に行って行く

個人の体力に合わせて無理をせず、徐々に、さまざまな種類の運動をお行うことが大切です。 柔軟体操(ストレッチ)から始めて、軽いレジスタンス運動(筋力トレーニング)、有酸素運動、本格的なレジスタンス運動というように、 段階的に行って行きましょう。

●それぞれの運動の目安

スクワットやダンベル体操など軽いレジスタンス運動は、少なくとも週に2〜3回行いましょう。 ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動は、「楽にできる」から「やや強い」と感じる程度の強さで20〜60分間行うようにします。 できるだけ毎日、少なくとも週に3〜5回行いましょう。運動する場合は、事前に担当医に相談してください。 特に、目や腎臓の合併症が進んでいる、骨や関節に故障があるといった場合は注意が必要です。 運動が苦手な人は、家でよく動いたり、買い物などの外出を通して、運動量を増やすよう心がけてください。

●運動の効果

運動をすると、体内のブドウ糖が消費されて血糖値が下がります。運動を長く続けていると、インスリンの効きも徐々に良くなります。 体重の減少、血圧が下がる、善玉コレステロールが増える、心肺機能が高まる、気分がよくなり生活の質が改善するなどの効果もあります。 高齢者の場合は、認知機能の改善も期待できます。


■薬物療法

副作用や飲み忘れに注意する

糖尿病の薬には、飲み薬と注射薬があります。

●飲み薬

▼インスリンの分泌をよくする薬
スルホニル尿素薬、グリニド薬、DPP-4阻害薬があり、膵臓のインスリン分泌が低下している人に適しています。

▼インスリンの効きをよくする薬
ビグアナイド薬チアゾリジン薬があり、肥満などでインスリンの効きが低下した人に適しています。

▼ブドウ糖の吸収を遅くする薬
α-グルコシダーゼ阻害薬は、小腸で炭水化物がブドウ糖などに分解されるのを遅らせて、血糖値の急上昇を抑えます。

▼ブドウ糖を尿の中に排出させる薬
SGLT2阻害薬という2014年に登場した薬です。

●飲み薬の副作用

低血糖を起こしやすいのは、スルホニル尿素薬とグリニド薬です。スルホニル尿素は、作用が強く12〜24時間続くため重症の低血糖が起こることがあります。 グリニド薬は、作用時間が短いので、頻度は少ないですが、低血糖には注意が必要です。 DPP-4阻害薬は、スルホニル尿素薬と併用すると低血糖が起こりやすくなりますが、単独では低血糖が起こりにくい薬です。 他の飲み薬は、単独で使えば低血糖はほとんど起こりません。低血糖以外の副作用もあります。 ビグアナイド薬は、吐き気などの胃腸症状が起こることがあります。 チアゾリジン薬は、むくみ、心不全の悪化などに注意します。α-グルコシダーゼ阻害薬は、腹部膨満感などが起こることがあります。 SGLT2阻害薬の副作用は、脱水、性器感染症、尿路感染症などです。

●飲み薬の注意点

高齢者の場合、認知機能の低下が原因で薬を飲み忘れることがあります。 飲み忘れた場合は、次回の問診時に必ず担当医に伝え、自己判断で後から服用することは避けましょう。 また、薬の成分を分解する肝臓や薬を排出する腎臓の働きが低下し、薬が効き過ぎて副作用も強く出てしまうことがあります。 他の持病で服用している薬がある場合は、その薬との相互作用で、副作用が起こりやすくなることもあります。 副作用がつらい場合は、担当医に相談して、対策を取ってもらいましょう。

●注射薬

▼インスリン製剤
膵臓から分泌されるインスリンと同じ働きの物質を薬にしたもので、自分で注射をして膵臓のインスリン分泌低下を補います。 食事の前に注射してすぐに効くタイプや、寝る前に注射して長時間かけて緩やかに効くタイプなどがあります。 インスリン分泌の低下が進んでいると、両方のタイプを組み合わせて使うこともあります。 食事を抜いたり量が少ないと、低血糖が起きやすいため、注意が必要です。

▼注射薬の注意点
認知機能が低下していて、1日に何度も注射をすることが困難な場合は、注射の回数が少ないタイプへの変更が考慮されます。 インスリン製剤では1日1回のタイプ、GLP-1受容体作動薬では週に1回の注射で済むタイプが登場しています。